赤点

意志薄弱で到底幸せが見込めない

無料で読めるWEB漫画トップ20

出版不況が続いて久しい今日この頃。それは漫画業界もご多分に漏れず。漫画雑誌もめっきり売れなくなりWEB漫画の時代が到来しています。

判で押したように皆同じ作風、それも毒にも薬にもならないような内容の作品が溢れていたのも過去のことです。今ではどれも質が高く漫画雑誌より豪華な連載陣を抱えているサイトも少なくありません。

ですが、無料で読めるのにイマイチ漫画ファン以外に広がりを見せていない印象のWEB漫画。浅学菲才の身なれど、何らかの形で貢献したいと考え、知名度の上昇を目的にオススメWEB漫画のランキングを作成しました。興味を持って頂けたら幸いです。また、敬語・敬称は割愛させていただいています。

 

■20位~11位

・20位 フルーツバスケットanother / 高屋奈月

www.hanayumeonline.com

超名作少女マンガ『フルーツバスケット』待望の続編。白泉社運営の『花LaLa online』連載。

前作で結ばれたキャラクターの子供やサブキャラクターが大人として登場したりと、何かと前作の繋がりが見られる。しかし恐らく既存のファンではなく新規層、現在の小中学生、に向けて描かれているので現在までのストーリー展開も前作と似通っている。今後の展開に期待。

 

・19位 野武士のグルメ  / 原作:久住昌之・作画:土山しげる

www.gentosha.jp

孤独のグルメ』『花のズボラ飯』の久住昌之原作で『極道めし』の土山しげるが作画を担当。定年退職を迎えた自称野武士の主人公・香住武が、昼間から日本酒とおでんで一杯引っかけたり、麦とろ飯を食べたり、トースト定食を食べたりする作品。

老人が飯を食うなんでもない漫画なのに何故か面白い。読後は少し背伸びをして和食を食いに街に出たくなります。

 

・18位 働かないふたり / 吉田覚

www.kurage-bunch.com

新潮社が運営する『くらげバンチ』連載。同サイトではこの他『山と食欲と私』も面白い。

吉田覚はこれが初連載。 ニート妹の日常を描いた作品。WEB漫画の典型「下らなくて読後何も残らないけどゆるくて面白い」の純度を極限まで高めたらこれになる。単行本化してるにも関わらず40話以上公開されており良心的。

 

・17位 イキガミ様 / TAGRO

www.poco2.jp

『ライチ☆光クラブ』で有名な古屋兎丸がスーパーバイザーを務める『ぽこぽこ』連載。『ぽこぽこ』はサブカル系に強い太田出版が運営しているサイトだけあり他に押切蓮介山本直樹駕籠真太郎志村貴子などサブカル界で著名な作家を抱え、今や国内一二を争う面白さのWEB漫画サイト。

変ゼミ』や『宇宙賃貸サルガッ荘』のTAGROの、地球が生まれた時から生きている「生き神様」が生活する海辺の田舎町が舞台の日常モノ。

いい意味で驚いた。「変わった設定で色々詰め込んでるのにつまらない」という印象があったTAGROが「ありきたりな設定で面白く」仕上げている。TAGROに抵抗がある人も試みに読んでみると驚くかもしれない。

 

・16位 お前ら全員めんどくさい! / TOBI

comic-meteor.jp

 『COMICメテオ』連載作品。こちらのサイトは男性向け作品が連載されており、この作品も高校教師ハーレムものと男性向け。

ありがちな設定であるもののとにかく登場キャラクターが可愛く、冗長になりがちなハーレムものらしからぬ話のテンポ感。多分あと一年前後でアニメ化されると思うので多く語るのは止めておきます。

 

・15位 亭主元気でマゾがいい! / 六反りょう

www.moae.jp

 以前、第37回MANGA OPENで東村賞・編集部賞のダブル受賞を果たしネットでも大きく話題になった『僕の変な彼女』の作者の作品

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……の陰でひっそり大賞に輝いた『幽霊社員』の作者六反りょうの作品。大賞に輝いたにも関わらず一切話題にならない悲哀を描いた『かませ犬狂想曲』で一躍話題をさらい今や連載も二作抱える漫画家へ。

かませ犬狂想録/六反りょう - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ

講談社が運営する『モアイ』連載作品。

元SMバーのS嬢である自分とその常連であるM男との結婚生活を描いたエッセイ漫画であけっぴろげな作風は『かませ犬狂想曲』から引き継がれており、結婚式で一悶着あったり姑にS嬢バレしたりとエッセイ漫画か疑わしいほどのネタ量。前述の賞レースで東村賞の受賞はならなかったものの、現役漫画家で東村アキコのDNAを最も色濃く継いでいるのは六反りょうで間違いない。

 

・14位 トモちゃんは女の子! / 柳田史太

sai-zen-sen.jp

 『第二回次にくるマンガ大賞』WEB漫画部門第一位作品。毎日更新の四コマWEB漫画サイト『ツイ4』連載作品。柳田史太は今作が初連載。

「ボーイッシュな女子高生・トモちゃんは、幼なじみの久保田淳一郎に想いを寄せるが、どうしても「女」であることが伝わらない……。好きな男(ひと)に「女の子」として見られたい!」というあらすじなのですが登場する女の子がとにかくカワイイ。

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ジュンの家に泊まりに行くことになったのに友達モードで素直にノっちゃうトモちゃんカワイイ

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体重聞かれてキレる女の子な一面持ってるトモちゃんカワイイ

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クール腹黒親友枠のみすずちゃん

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クール設定なのに交際とはどういうものか気になってジュンと極短期間付き合ってたという年相応な行動もカワイイ

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友人のシャルルと仲良くしている理由をその母に問われたみすずちゃん。隙あらば人の上に立とうとするカワイイ

とにかくキャラが超カワイイ。『ツイ4』の公式アカウントで毎日最新話をアップしてくれて一々サイトにアクセスせずとも読めるのもありがたい。ちなみにみすずちゃんは僕のアイコンに使用しています。みすずちゃん超クールカワイイ。

 

・13位 飛行文学 / しゃんおずん

www.to-ti.in

 さいとうプロがスピンオフ的に創業したリイド社が運営する『トーチweb』連載。今、WEB漫画界で最もアツいのはこのサイトを置いて他にない。2014年サイト開設と出遅れた感こそあったが、その作品の圧倒的な質によって他を圧倒した。

高浜寛などの大御所漫画家だけでなく新人にイラストレーターやアニメーション作家として活躍している人物も連載しており純粋にその作品の質のみに依って連載が決まっているのは容易に想像がつく。開設当初から赤字を計上し続けているが、それはリイド社の商才のなさと漫画フリークの文化レベルの低下が原因だろう。サブカルや文化人を自称するならばここをチェックしてなければにわか呼ばわりは避けられないだろう。

閑話休題。これはしゃんおずんのデビュー作だが信じられないクオリティだ。どこか懐かしくポップな絵柄と穏やかな雰囲気、小気味良いコミカルな展開。手塚などが活躍した黎明期の漫画を読んでいるような錯覚に陥ることさえある。二話までしか公開されてないので語れる部分は少ないが黎明期の漫画が好きならばまず外れないだろう。

 

・12位 同居人はひざ、ときどき、頭の上 / みなつき・二ツ家あす

comic-polaris.jp

 前述の『COMICメテオ』の兄妹サイトである『COMICポラリス』連載。こちらは女性向けでメテオに比べると対象年齢も少し高め。

売れっ子作家と猫が共に生活する様子を両者の目線から描くザッピングストーリー。女子高校生が好きそうな感じ……でも悔しいけど面白い。少女マンガの文脈で描かれており、ジャンル分けするならコメディよりラブコメの方が正確。テンポも良くコマ割りも上手い。絵だって勿論。……でも何故か悔しくなるのは周囲の目線を気にしすぎているからだろうか…。

 

・11位 太郎は水になりたかった / 大橋裕之

www.to-ti.in

『トーチweb』連載。『エアーズロック』や『遠浅の部屋』で有名な大橋裕之の最新作。

初めてこの絵を見る人は驚くだろうが読み進めるうちにストーリーテリング上、過不足ない計算された絵であることを理解するだろう。

スクールカーストの底辺を生きる中学生二人組、ドクロみたいな顔した太郎と、アサリの中身みたいな頭をしたヤスシの物語。起伏のない生活、スクールカースト下位特有の葛藤や拗らせ、イカ臭い青春を謳歌する姿や一歩先に行く友人に対する嫉妬。相変わらず青臭いノスタルジーを感じさせる表現が上手すぎる。大人なら当時の気持ちを思い出して物悲しくなること請け合い。

 

■10位~4位

・10位 道割草物語 / 武川慎

comic-meteor.jp

 武川慎先生が『COMICメテオ』で連載していた作品。一月終盤に完結したのですが、あまりに素晴らしいので掲載させていただきます。

ウイルスによって人類が絶滅して20年後の世界に生きる吸血鬼達を武川先生の超絶画力で描いた作品なのですが、男が一切居ないおかげで画面に美しさしか存在しない……美しさだけが湯水のように溢れ出してくる……しかも「吸血を行われた対象が吸血鬼として生まれ変わる『宿し直し』という行為によって主従・カップリングが成立する」というどこかに某聖人がみてる系少女小説リスペクトも感じられる……まあ百聞は一見に如かず。第一話終盤のこの画像を見て下さい。

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尊い……「尊い」という言葉が嫌いな僕も思わず「尊い……」とつぶやき涙を流しました。一話からこれですよ……武川先生飛ばしすぎでしょう……ディストピアものかと思わせてユートピア……ありがとう……武川先生ありがとう……。

もう完結してネットでは四話までしか閲覧出来ませんが、上下巻の二冊しか出てませんので二食ランチ我慢すれば買えます。腹は減っても心は満たされますので是非。ちなみに二話はこの四人で乱交するお話です。

 

・9位 オデットODETTE / 目当 貼

comic-polaris.jp

 『同居人は…』と同様『COMICポラリス』連載。『このマンガがすごい!2016』第六位。

何でもそつなくこなす人の体に猫の顔した彼氏と、ドジだけど底抜けに明るい彼女とのラブコメ。20代女性を中心に流行中。二人の掛け合いや関係性、思いやりあう様子が愛おしい。関係性萌えみたいな作品は若年層向けでクドい描写が多いが、これはさっぱりしていて絵柄も落ち着いた男でも楽しめる作品に仕上がっている。多恵ちゃんおばあちゃんっぽいかわいい。

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・8位 トキワブルーに憧れて / 牧鉄兵

www.to-ti.in

 『トーチweb』連載。映像作家、兼漫画家として活躍する牧鉄兵版『まんが道』であり『トキワ荘物語』。クリエイターの熱情や苦労を描いた作品。

絵柄も話運びもトキワ荘のメンバーの影響が見られる。

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 7話までしか公開されておらず、ここまでが序章。次の更新からが本編といった感じで多く語れる部分はないですが、大物漫画家が講師として多数在籍する京都精華大学で教鞭をとっているだけありドラマツルギーの質はこのランキング内でも一、二を争う。努力の描写も飽きさせないようコミカルな絵柄で大量に挟まれているので、今後主人公が夢を叶えていく中で得られるカタルシスもひとしおだろう。この絵を見てノスタルジーを感じるなら読んで損はない。

 

・7位 カシワイ作品集 / カシワイ

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 『トーチweb』連載の短編集。現在新作執筆のため休載中。

台詞が極力排除されており絵の力のみでストーリーを展開する。「コミティアっぽい」は主に中傷する際に使用される言葉だが、いい意味でコミティア出身らしい作風。

なんでもない日常のありがたみをゆったりと、それでいて力強く教えてくれる作品。

 

・6位 Stand by me 描クえもん / 佐藤秀峰

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 お馴染み『トーチweb』連載。『ブラックジャックによろしく』や『海猿』で有名な佐藤秀峰の新作。

漫画家志望の青年・漫画描男の下に「俺はお前だ。お前が人生に失敗しないように未来からやって来た」とのたまう自称・未来の自分の老人が現れ……というお話。

更新ペースは遅いものの、その圧倒的な面白さ・画力は健在で、まだ四話までしか公開されていないのでこの順位に落ち着いたものの話が見えてくればより一層の飛躍もあり得る。無料でこのクオリティの作品が読める現代に感謝。

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相変わらずアツくて最高……!

 

・5位 淡島百景 / 志村貴子

www.poco2.jp

 『ぽこぽこ』連載。言わずと知れた百合漫画の大家、志村貴子の新作。

元宝塚トップスター『淡島千景』の名前をもじったタイトル通り、淡島歌劇学校に通う少女達を中心に描かれる群像劇。主役は毎話交代。志村先生らしい淡々とした描き口だが、感情表現が絶品で漫画的な描写も生々しく感じられる。『青い花』の上田良子が登場するファンサービス回もあるのがいやらしい。

 

・4位 サザンと彗星の少女 / 赤瀬由里子

www.to-ti.in

『トーチweb』連載。 宇宙との交流が当たり前になった未来の地球が舞台。地球人の青年は「破滅を呼ぶ生命体」と呼ばれる宇宙随一の戦闘力を持つ彗星人の少女に出会い旅に出る……というスペースオペラ

全ての漫画家はこの作者の年齢を聞いたら驚嘆とともに無力感を感じ、筆を折りたくなるだろう。なんと平成生まれの25歳。全編フルカラーで絵柄や話運びも巧み。70~80年代に第一線で活躍した漫画家のよう。作風や絵柄は週刊誌向きでこそないものの次代を担う漫画家であることは間違いない。今のうちに注目して数年後に節穴どもにドヤ顔してデビュー作から目を付けてたと語ってやろう。

 

■3位~1位

・3位 Fantasic World / ひらのりょう

www.to-ti.in

『 第18回文化庁メディア芸術祭』マンガ部門 審査委員会推薦作品。上坂すみれ『来たれ!暁の同志』MV制作や七尾旅人のアルバムジャケットを手掛けたりと期待の若手アニメーション作家ひらのりょうが描くファンタジー。

地球空洞説が採用されており、『幽☆遊☆白書』の魔界のような地球内部(シャンドラ)の世界が舞台。界境トンネルが原因で様々な災厄が起こるあたりも同様。シャンドラと人間界はかつて友好関係にあったが、他者と交わるものの常として戦争が起こりシャンドラは荒廃。主人公はシャンドラに取り残された人間の息子で、シャンドラの実質的な王の半身であり歯を模した風貌の『歯ちゃん』と共に旅をする。

ポップでキャッチーなキャラデザ、一見するとヘタウマに思われがちな独特な絵柄だが美大出身だけあってパースなどは一切狂っておらず、これが絶妙なリアルさを演出している。今最も完璧なファンタジー世界が描かれているのはこの作品を置いて他にない。

 

・2位 なんてことないふつうの夜に / 嶽まいこ

feelyoung.jp

安野モヨコ岡崎京子内田春菊、おかざき真理、ヤマシタトモコなどの銀河系軍団と言っても過言ではない超豪華漫画家たちを抱え、成人女性向けコミックでは一人勝ち状態の『 FEEL YOUNG』、通向けな特集が多いBL誌『on blue』などを刊行する祥伝社が満を持して昨年末に開設した『FEEL FREE』連載。イラストレーター嶽まいこの短編集的な作品。

叙情的で胸がじんわり温かくなるような短編が多い。流石イラストレーターという温かみのある絵柄がどこか不思議だけど、もしかしたらこんなことあるかもしれない、という妙なリアルさを生んでいる。どんなシリアスな作品も最後のコマは必ずコミカルに終わるのも読んでいて気持ちがいい。

『追憶のネットサーフィン』と『手のひらに地上の星』は特にお気に入り。

 

・1位 プリンセスメゾン  / 池辺葵

yawaspi.com

 『このマンガがすごい!2016』オンナ編10位選出作品。小学館が運営する“ゆるい漫画”がテーマの『やわらかスピリッツ』連載作品。映画化もされた『縫い裁つ人』で有名な池辺葵の新作。

年収250万、25歳の主人公・沼越さんの夢はマイハウス。趣味は住宅見学会巡り。登場人物は全員どこか「欠けた」人間ながらも「家」を通した温かい人間ドラマが見えてくる作品で寂寥感溢れる池辺先生の筆致がそれを引き立てる。

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沼越さんが一歩一歩今を生きる姿には「励まされる」「胸を掴まれる」などといった押しつけがましい表現ではなく、胸を優しく包まれるような、目の前が不思議な明るさを帯びるような、そんな気持ちにさせられる。

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沼越さんがきらびやかな住宅見学会から自宅である古いアパートに帰宅し通帳を見て微笑むシーン。池辺先生は光の使い方が絶妙でこの場面では差し込む明るい日差しで気分を表現。第一話、感情移入も難しいたった21ページという制限の中でこれだけ感動させられるのは日本でも片手で数えられるほどしか居ないだろう。

WEB漫画ではずば抜けてトップ。紙媒体も含め現行連載作品の中で今一番次の話を楽しみにしている作品です。

 

 

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キン肉マン』、『特集 高浜寛』、『金魚王国の崩壊』といった既アニメ化作品やアニメ化決定作品、認知度の高い作品、スピンオフ、連載という形式か意見が分かれる作品は除いてランキングを作りましたが、いかがでしたでしょうか。

レベルが上がってきたとはいえ、誰にでも門戸が開かれているのがWEB漫画のいいところ。正統派もアバンギャルドもなんでもあります。興味を持ったら是非WEB漫画の海に飛び込んでみてください。きっとあなた好みの作品が見つかりますよ。